強みにこだわり、その上に築く
欧州の「隠れたチャンピオン」から、意欲あるベトナム企業が学べること。
事業が好調なとき、多角化への誘惑は強くなります。工場がレストランを開き、商社がホテルを買い、知人がそうしたからと同族企業が不動産に投資する。うまくいくこともあります。しかし多くの場合、資金も、経営の目配りも、エネルギーも分散しすぎてしまいます。
静かな世界のリーダーたち
ドイツの経済学者ハーマン・サイモンは、自ら「隠れたチャンピオン」と名付けた企業を長年研究しました。それぞれの市場で世界トップ3に入りながら、一般にはほとんど知られていない中堅企業です。サイモンは世界に約3,000社を数え、その数はドイツが群を抜いて多いといいます。産業用ラベル、歯科用機器、特殊バルブといった製品をつくる会社で、名前を知る人は少なくても、顧客にとってはなくてはならない存在です。
これらの企業に共通するのは集中です。狭い分野を選び、広げるよりも深く掘り下げます。顧客を非常によく理解し、着実に改善に投資し、人材を長く大切にします。サイモンの調査によれば、これらの企業の離職率は年平均2.7%で、ドイツ全体の7.3%を大きく下回り、経営トップの在任期間はおよそ20年に及んでいました。
サイモンの著書は、ベトナム語でも『Các nhà vô địch ẩn danh của thế kỷ XXI』として出版されています。一読の価値がある一冊です。
強い中核からの成長
ベイン・アンド・カンパニーの研究も同じ方向を示しています。G7諸国の大企業を対象とした調査では、10年間にわたって持続的かつ収益を伴う成長を遂げたのは、約8社に1社にすぎませんでした。そしてその多くは、まず明確な中核事業を強化し、そのうえで既存の強みが生きる隣接分野へと慎重に踏み出すことで成長していました。
これは変化を否定する議論ではありません。変化を意図して選ぶべきだという議論です。強い中核があれば、新しいことに挑戦するための資金、信用、そして自信が得られます。中核が弱ければ、新しい事業はすべて賭けになってしまいます。
実務においてこれが意味すること
私たちは仕事の始めに、シンプルな問いを投げかけることがよくあります。この会社が本当に得意なことは何か、そして顧客はそれを知っているか。その答えは、ときに意外なものです。自社をメーカーだと考えている会社が、実は納期の速さで評価されていることがあります。卸売業者が、価格よりも助言の質で評価されていることもあります。自社の本当の強みがわかれば、投資、テクノロジー、新市場についての判断はずっと明確になります。
そうなれば近代化は、それ自体が目的ではなく、強みをさらに強くするための手段となります。
考えてみたい問い
- 当社の上位3社の顧客に、なぜ当社から購入するのかを尋ねたら、何と答えるだろうか。
- 当社の活動のうち、しっかり利益を生んでいるものはどれで、主に経営の関心を奪っているものはどれか。
- 集中すれば、ベトナムで、あるいは地域で一番になれる分野はどこか。
出典
- Hermann Simon, 'Hidden Champions – the spearhead of the German economy', The European Financial Review, 15 December 2017. https://www.europeanfinancialreview.com/hidden-champions-the-spearhead-of-the-german-economy/
- Friedrich Naumann Foundation Vietnam, Vietnamese edition of 'Hidden Champions of the Twenty-First Century'. https://www.freiheit.org/vietnam/hidden-champions-twenty-first-century-success-strategies-unknown-world-market-leaders
- Chris Zook, 'Focus on your core for profitable growth', Bain & Company, 2001. https://www.bain.com/insights/focus-on-your-core-for-profitable-growth
- C.K. Prahalad and Gary Hamel, 'The Core Competence of the Corporation', Harvard Business Review, May–June 1990. https://hbr.org/1990/05/the-core-competence-of-the-corporation