秘伝の方程式はない
私たちが経営の流行に慎重である理由と、その代わりに大切にしていること。
シックスシグマがあらゆる課題の答えとされていた時代を、覚えている方もいらっしゃるでしょう。その前にはTQM(総合的品質管理)があり、その後もBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)、バランス・スコアカード、アジャイル、そして今はもちろん人工知能と続いています。いずれも会議や資格、コンサルタントとともに登場し、いずれにも優れた着想がありました。そしてどれもが、ある時点で、本来想定していなかった問題まで解決する万能薬として売り込まれたのです。
優れた道具、ふさわしくない場所
シックスシグマはその好例です。1980年代にモトローラで製造上の不良を減らすために開発されたこの手法は、同じものを同じ方法で、より少ないミスでつくることが目的の場面で、よく機能します。1990年代にはゼネラル・エレクトリック(GE)がこの手法を広く知らしめました。しかし、GE出身の経営者が、発明を生命線とする3Mにこれを持ち込んだところ、結果は一様ではありませんでした。ビジネスウィーク誌によれば、3Mの売上高に占める発売5年未満の製品の割合は約3分の1から約4分の1に低下し、後任の経営者は研究部門でのこの取り組みを緩めました。一貫性のためにつくられた手法が、創造性の領域に当てはめられていたのです。
ここから得られる教訓は、シックスシグマが悪いということではありません。どの道具にも、ふさわしい居場所があるということです。ベイン・アンド・カンパニーは数年にわたり、数千人の経営者を対象に、利用している経営手法について調査しました。その81%が、こうした手法は期待されるほどの成果をもたらさないと答えています。手法が役に立たないからではありません。競合他社が使っているから、流行しているから、といった適切でない理由で選ばれることが多いからです。
印象的な統計にも注意を
変革プログラムの7割は失敗する、という話を耳にしたことがあるかもしれません。至るところで引用されている数字です。しかし、英国のある経営学者がその根拠を探したところ、妥当で信頼に足る根拠は見つかりませんでした。これをご紹介するのは、揚げ足を取るためではありません。私たちの言いたいことをよく表しているからです。経営の世界では、誰もが知っているとされることの多くが、思われているほど確かではありません。良い判断は、確かめることから始まります。
企業はそれぞれに異なる
昔ながらの方法と紙の帳簿、そして忠実なチームで、何の問題もなく回っている会社もあります。近代化したいという思いは理解できますが、すでにうまくいっているものを守り、さらに強くするほうが良い選択である場合もあります。業界に特化したシステムを必要とする会社もあれば、本格的な近代化が本当に必要な会社もあります。すべてに当てはまる唯一の方程式はありません。
だからこそ、私たちは出来合いの解決策を携えて伺うことはしません。携えていくのは問いです。多くの知識はあっても、世界中のあらゆる企業を知っているわけではありませんし、ましてや貴社のことはまだ存じ上げません。ですから、まず拝見します。市場、人材、数字、そして社内で実際に仕事がどう流れているかを。そのうえで初めて、役に立ちそうなことをご提案します。それは新しいシステムかもしれませんし、日々の段取りの小さな変更かもしれません。あるいは、今うまくいっていることを自信を持って続けることかもしれません。
新鮮な視点と、豊かな経験
社外の相談相手が提供できるのは、新鮮な視点と、ほかの多くの場で培った経験の組み合わせです。道具はその後に来るものであり、仕事にふさわしい規模であるべきです。
考えてみたい問い
- 現在のシステムのうち、自社に合っていたから選んだものはどれで、評判が良かったから選んだものはどれか。
- 何かを変える前に守るべき、すでにうまくできていることは何か。
- 取引先から受けた直近の大きな約束について、その根拠を確かめただろうか。
出典
- BusinessWeek, 'At 3M, a struggle between efficiency and creativity', 11 June 2007. https://effectuation.org/hubfs/Journal%20Articles/2016/06/3m-struggle-between-efficiency-and-creativity.pdf
- Darrell Rigby, 'Don't get hammered by management fads', Bain & Company, 2001. https://www.bain.com/insights/dont-get-hammered-by-management-fads
- Mark Hughes, 'Do 70 per cent of all organizational change initiatives really fail?', Journal of Change Management 11(4), 2011. https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/14697017.2011.630506