自分の目で確かめる
費用をほとんどかけずに、大きな変化をもたらしうる日本の仕事の習慣。
日本的経営は、専門用語や壁一面の図表にあふれた複雑なものと思われがちです。しかしその本質の多くは、驚くほどシンプルです。ここでは、規模を問わずどんな企業にも役立つと私たちが考える、三つの習慣をご紹介します。
現場:仕事が行われている場所を見る
トヨタは「現地現物」を、問題が起きているその場所に自ら足を運んで確かめることだと説明しています。報告書を読むのでも、会議で話を聞くのでもなく、作業場や倉庫、店頭に行き、じっと観察することです。これを日常的に実践している経営者は、月次報告が1年間見えなくしていることを、10分で見抜くことがよくあります。材料を待って止まっている機械、3回も記入されている書類、誰も自分の担当だと思っていないために待たされている顧客。
改善:数多くの小さな改善
改善とは、実際に仕事をしている人たちが提案し、実行する、小さな一歩の積み重ねによる継続的な改善です。大がかりな変革プロジェクトほどの派手さはありませんが、まさにそこに強みがあります。小さな変更は費用が少なく、すぐに試すことができ、うまくいかなければ元に戻すのも簡単です。
こうした基本が重要であることには、確かな裏付けがあります。スタンフォード大学、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス、世界銀行の研究者たちが、インドの繊維工場を対象に綿密な実験を行いました。職場の整理整頓、不良の記録、在庫の管理といったシンプルな手法の導入支援を受けた工場は、最初の1年で生産性が約17%向上しました。興味深いことに、後にそれらの手法が定着しなくなった最も多い理由は、推進役だった管理者が職場を去ったことでした。良い習慣には、責任を持つ人が必要なのです。
報・連・相:報告・連絡・相談
日本の多くの企業では、社員は「報・連・相(ほうれんそう)」を学びます。進捗を報告し、変更を関係者に連絡し、問題が大きくなる前に相談する。これによって全員の足並みがそろい、思わぬ事態を防ぐことができます。使い方を誤れば、小さな判断まですべて上に上げる細かすぎる管理になりかねません。うまく使えば、双方向の信頼が育ちます。管理者は何が起きているかを把握でき、チームは責められることなく早い段階で問題を伝えられると知っているからです。
小さく始める
これらの考え方は、いずれも新しいソフトウェアや多額の予算を必要としません。必要なのは、関心を向けること、一貫性、そして関心を持ち続ける管理者です。それこそが、日本と同じようにベトナムでも機能する理由です。これらは仕事をする人々を尊重し、すでにあるものの上に築いていくからです。
考えてみたい問い
- 受注が社内をどのように流れていくかを、ただ観察するためだけに1時間を使ったのは、最後にいつだったか。
- 社員が小さな改善を提案できる手軽な仕組みがあり、私たちはそれを実行に移しているか。
- 問題は早い段階で上がってくるか。それとも、高くついてから初めて知るのか。
出典
- Toyota UK, 'Genchi Genbutsu – TPS guide'. https://blog.toyota.co.uk/genchi-genbutsu
- Bloom, Eifert, Mahajan, McKenzie and Roberts, 'Does management matter? Evidence from India', Quarterly Journal of Economics, 2013; summary by the International Growth Centre, 2018. https://www.theigc.org/publications/management-delivers-why-firms-should-invest-better-business-practices
- GLOBIS Insights, 'Hōrensō', 3 June 2024. https://globisinsights.com/career-skills/communication/hourensou/
- JICA, 'Kaizen' (quality and productivity improvement), January 2025. https://www.jica.go.jp/english/our_work/types_of_assistance/tech/projects/activities/activities_54.html