欧州のグリーン規制:壁であり、扉でもある
森林破壊や炭素に関する欧州の新しい規則は、書類仕事が増えるだけのように見えるかもしれません。しかし、よく整ったベトナムのサプライヤーにとっては、新たな機会の扉となる可能性もあります。
欧州は、ベトナムにとって最も重要な顧客の一つです。2020年8月1日に発効したEU・ベトナム自由貿易協定(EVFTA)にも後押しされ、2025年のベトナムから欧州連合(EU)への財輸出は562億米ドルに達しました。その欧州がいま、サプライヤーに求めるものを変えつつあります。
何が変わるのか
EU森林破壊防止規則(EUDR)は、コーヒー、木材、ゴム、カカオ、パーム油、大豆、牛由来製品を欧州市場に出す企業に対し、それらが近年森林破壊された土地で生産されたものではないことを示すよう求めます。2度の延期を経て、大企業・中堅企業には2026年12月30日から、零細・小規模企業には2027年6月30日から適用されます。ベトナムは低リスク国に分類されており、確認手続きは簡素化されますが、それでも買い手は、商品の背後にある農園やプランテーションがどこにあるのかを尋ねてくるでしょう。
炭素国境調整メカニズム(CBAM)は、2026年1月1日から、鉄鋼、アルミニウム、セメント、肥料、電力、水素の輸入に適用されています。欧州の輸入業者はこれらの製品の製造時に排出された炭素を計上しなければならず、当然ながら、それを報告できるサプライヤーを選ぶようになるでしょう。日本の買い手も同様の方向に進んでいます。日本の新しいサステナビリティ開示基準は、2027年3月期から最大規模の上場企業を皮切りに段階的に適用され、サプライチェーンにおける排出量も対象に含まれます。
なぜ朗報になりうるのか
こうした規則は、自社の事業をよく把握している企業に報いるものです。コーヒー部門では、2025年の調査で、区画単位の記録をつけていた小規模農家は約10%にとどまることがわかりました。これは課題であると同時に、好機でもあります。信頼できるトレーサビリティを提供できる生産者や輸出業者は、より安定し、より条件の良い契約を得られると見込まれています。ベトナム自身も同じ方向に進んでいます。2021年の国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で2050年までに排出量実質ゼロを達成すると表明し、国内の炭素市場も現在、試行段階にあります。
多くは費用をかけずにできること
準備の多くは、それほど費用がかかりません。原材料の調達元を記録する。エネルギー使用量と生産量について、シンプルで一貫した記録をつける。サプライヤーにも同じことをお願いし、必要に応じて手助けする。無理なくできるところから省エネルギーに取り組む。これはコストの削減にもつながります。そして、欧州や日本の顧客と早めに話し合い、何が必要とされるのかを正確に把握する。これを官僚的な手続きではなく、日頃の「整理整頓」として捉える企業は、その結果、業務全体がより円滑に回るようになることが少なくありません。
考えてみたい問い
- 自社の原材料がどこから来ているのか、正確に把握しているか。
- 自社の製品にどれだけのエネルギーが使われたかを、顧客に説明できるか。
- 顧客のうち、最初にこうした問いを投げかけてくるのはどこか。
出典
- VCCI WTO Center, 'Việt Nam xuất siêu sang EU 38,6 tỷ USD', 9 January 2026. https://trungtamwto.vn/chuyen-de/31570-viet-nam-xuat-sieu-sang-eu-386-ty-usd
- European Commission, Access2Markets, 'Delay until December 2026 and other developments in the implementation of the EUDR'. https://trade.ec.europa.eu/access-to-markets/en/news/delay-until-december-2026-and-other-developments-implementation-eudr-regulation
- Ministry of Agriculture and Environment of Viet Nam, 'Vietnam classified as low risk under the EU Deforestation Regulation', May 2025. https://en.mae.gov.vn/vietnam-classified-as-low-risk-under-the-eu-deforestation-regulation-8892.htm
- International Carbon Action Partnership (ICAP), 'EU adopts simplifications to CBAM rules ahead of compliance phase starting 2026', October 2025. https://icapcarbonaction.com/en/news/eu-adopts-simplifications-cbam-rules-ahead-compliance-phase-starting-2026
- Slaughter and May, 'ESG in APAC 2025: Japan'. https://www.slaughterandmay.com/services/practices/environmental-social-and-governance/esg-in-apac-2025/japan/
- AgNavigator, 'Land legality and plot-level traceability challenge Vietnam's coffee sector under EUDR', 12 February 2026. https://www.agnavigator.com/Article/2026/02/12/land-legality-and-plot-level-traceability-challenge-vietnams-coffee-sector-under-eudr/
- Viet Nam Climate Change portal, 'Vietnam's Prime Minister announces net-zero target at COP26', November 2021. https://www.climatechange.vn/climate_news/vietnams-prime-minister-announces-net-zero-target-at-cop26/
- Ministry of Agriculture and Environment of Viet Nam, 'Viet Nam prepares for developing carbon market post-COP30', November 2025. https://en.mae.gov.vn/viet-nam-prepares-for-developing-carbon-market-postcop30-9137.htm